ニュースリリース

認知症に対してお笑いや童謡による感性刺激の効果を確認
特別養護老人ホームで脳波計測実験を実施

2019年9月5日

慶應義塾大学理工学部満倉研究室
社会福祉法人スマイリングパーク
株式会社電通サイエンスジャム
トッパン・フォームズ株式会社

 慶應義塾大学理工学部満倉研究室(以下、満倉)と株式会社電通サイエンスジャム(以下、DSJ)、トッパン・フォームズ株式会社(以下、トッパンフォームズ)は、認知症の方とのコミュニケーション改善を目的に、感受性に関する実証実験を行い、認知症に対してお笑いや童謡による感性刺激の効果を確認することができました。
 実証実験は、特別養護老人ホームほほえみの園(宮崎県都城市)で行いました。認知症と診断されている20名に対してお笑いや童謡のステージを鑑賞してもらい、その際の脳波を脳波計測装置「感性アナライザR*1を使用して計測しました。その結果、被験者の方は通常時に比べて高揚感(ワクワク度)が向上し、ストレス度が低下することが定量的に確認できました。
 認知症の方は表情や自発的な行動が少ないと言われていますが、被験者の方はステージ鑑賞中に声を出して笑ったり、手をたたいたり、歌を口ずさんだり、豊かな表現を示していました。これらの行動から、笑いや思い出による刺激は脳に効果的であると考えられます。
 今後はこのような実証実験を継続しながら、並行して感性刺激による認知度合いの長期的変化を研究し、認知症の方とのコミュニケーション改善に取り組んでまいります。

童謡歌手によるコンサートの様子 感性アナライザで得られたワクワク度(高揚感)とストレス度のグラフ

背景

 日本では高齢化社会に伴い、認知症が増加傾向にあります。厚生労働省の「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、認知症は誰でも関わる可能性がある身近な病気であり、今後認知症の方の意思が尊重され、住み慣れた地域環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指すとされています。また「介護者への支援」や「認知症の方やその家族の視点の重視」といった、認知症の方のみならずその周囲の人々を含めた対策強化が盛り込まれています。介護者やご家族にとって、認知症の方とのコミュニケーションは困難な課題であり、改善策が求められています。

実験概要と結果

    ■対象
    認知症の方(特別養護老人ホームほほえみの園 利用者および入居者)20名
    ■手法
    感性アナライザにより脳波を計測し、ワクワク度・ストレス度などの感性変化を観察
    ■情報刺激
    ①芸人によるお笑いパフォーマンス
    ②童謡歌手によるコンサート
    ■結果
    通常時と比較して①の刺激に対して高揚感(ワクワク度)が平均28.9%上昇し、ストレス度の低下が平均4.8%見られた。
    また、②の刺激に対して高揚感(ワクワク度)が平均15.1%上昇し、ストレス度の低下が平均7.5%見られた。
    これらは認知症のレベルが高い方、低い方の両方において同じ傾向であった。

今後の展開

 トッパンフォームズは認知症に関わる方々のサポートを目的に、ヒューマンセンシング技術を用いた調査事業の一環として、満倉と共同で感受性に関する基礎研究を進めています。認知症や認知症予備軍の方一人ひとりへの最適な感性刺激を見つけ、介護者やご家族とのコミュニケーション改善に役立てるシステムの構築を目指します。なおトッパンフォームズとDSJは上記システムに関し特許出願を行っています。
 またトッパンフォームズは、このシステムを介護者やご家族のみならず、認知症の方に関わるさまざまな事業者の方が広く活用できるようにすることを目指します。

以上

*1 感性アナライザとは、DSJ独自の脳波ヘッドセットによって得られた脳波データに、満倉監修のアルゴリズムを用いることで、「高揚感(ワクワク度)」「ストレス度」などの感性の推定を行うことができる脳波計測装置です。

※「特別養護老人ホームほほえみの園」(宮崎県都城市丸谷町4670番地) 社会福祉法人スマイリングパーク運営

※「感性アナライザ」は、株式会社電通サイエンスジャムの登録商標です。

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